湊かなえさん「告白」 [本☆☆☆]
昨年の本屋大賞受賞作、映画化もされた話題の小説です。
http://kokuhaku-shimasu.jp/index.html
全編通して重苦しさを感じはしましたが、読みやすくてあっという間に読み終えてしまいました。
「聖職者」「殉教者」「慈愛者」「求道者」「信奉者」「伝道者」の6章からなっています。
「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」 シングルマザーの教師・森口悠子の4歳の娘が職場である中学校のプールで水死しているのが発見されます。警察は状況から誤って転落したと判断しますが森口は過去の出来事や娘の遺品から真相に到達します。犯人は森口が担任の1年B組の男子生徒2名、渡辺と下村。3学期の終業式に、森口は生徒たちを前にして事件の真相を告白します--。
…というのが第1章「聖職者」の粗筋なんですが、この章がすごいです。全て森口の語り口によって書かれています。台詞や情景
描写はありません。生徒とのやりとりも全て語り口です。湊さんの筆力に圧倒されました。
2章以降は語り手を変えて「その後」が描かれます。一見無関係に見えるクラス委員長、下村とその母親、そして渡辺です。
その語りも様々な形態をとっているものの、「告白」です。これもまた上手いです。
それぞれの立場・視線で物語は少しずつ進み、やがて想像を超えたエンディングへ突入します。
語り手たちがそれぞれに身勝手で自己愛の塊で少しずつ歪んでいて、デフォルメされてはいるものの、現代風にリアルに感じてしまいます。それは森口教師も同じです。
ところどころ「んなバカな」という箇所がありますが、そう思いつつもエンターテイメントとして面白いです。
湊さんの次作も読んでみたいと思います。
ところで、思春期の自己顕示欲、自意識過剰というのはよく使われますが、だいたいが男子生徒なような気がします。女子はあまりないんでしょうか?
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