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万城目学さん「偉大なる、しゅららぼん」 [本☆☆☆]


偉大なる、しゅららぼん (集英社文庫)

偉大なる、しゅららぼん (集英社文庫)

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/12/13
  • メディア: 文庫



京都、奈良、大阪ときて、今度は滋賀が舞台です。次はどこかな?
万城目さんらしい壮大で荒唐無稽なファンタジーです。

高校入学を機に、琵琶湖畔の街・石走にある日出本家にやって来た日出涼介。本家の跡継ぎとしてお城の本丸御殿に住まう淡十郎の“ナチュラルボーン殿様”な言動にふりまわされる日々が始まった。実は、日出家は琵琶湖から特殊な力を授かった一族。日出家のライバルで、同様に特殊な「力」をもつ棗家の長男・棗広海と、涼介、淡十郎が同じクラスになった時、力で力を洗う戦いの幕が上がる…!
(「BOOK」データベースより)

上の粗筋は細かくいうと正確ではないですが、それを書いちゃうと面白さが半減しちゃいますのでここでは書きません。

なにより設定がいいです。琵琶湖から与えられた能力をフルに使って一大企業グループを築き上げた日出本家の住むのは本当のお城。通学には船を使い、嫡男の淡十郎の好みというだけで赤い詰め襟をしつらえる。淡十郎の姉・清子は城の中を白馬に乗って駆け巡る。
能力を伸ばすために日出本家に居候することになった、事情を何一つ知らない日出涼介も必然的に巻き込まれてしまいます。

有史以来争ってきた日出家と棗家のライバル関係に、超能力ものと学園ものの面白さ、そして万城目さん特有のキャラの立った登場人物たちが絡み合って、他の用事をうっちゃっても読んでいたくなります。
日出家と棗家の牽制関係や、棗家の「力」の本質が最後までわからない(日出家の人間にはわかりようがない)といった制約が物語を一層楽しくさせています。

強大な敵を相手に戦うのは日出本家の長女で「グレート清子」と仇名される日出清子で、弟の淡十郎と力を合わせて…と勝手に想像していたのですが、いい意味で裏切られました。
あちこちに撒かれた伏線が綺麗に収束していくのは快感でもあります。

かつて日本中に湖の民がいて、というくだりに高度経済成長で日本が失ったいろいろなものを想起し、真の敵というには切なすぎる過去にじわっときてしまいました。

それだけに棗広海が最後に仕掛けた大技が、解決策としてそれでよかったのか個人的には迷うところではありますが、ラストで払拭されました。

日出家と棗家に幸あれ。

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