石持浅海さん「ブック・ジャングル」 [本☆☆]
後書きでアクションものを書きたかった、とあったのですが、アクションものかぁ?というのが正直な感想です。
4月の夜、市立綾北図書館が戦場と化す。閉館される思い出の場所を、見納めにきた昆虫学者の卵・沖野国明。そこで女子高生・百合香と友達の3人組に出会う。やがて不気味なモーター音が鳴り響く。フィールドワーク体験を生かし、虫捕りの要領で毒針ラジコンヘリをかわしていく沖野。姿を見せぬ襲撃者の目的は何なのか。閉鎖状況に追い込まれた人間達の心理を描いて秀逸な書き手が、「真夜中の図書館」という閉鎖空間に挑戦します。
(出版社HPより)
閉鎖された図書館に忍び込んだ男女が閉じ込められ、毒針を装着したラジコンヘリに襲われます。襲撃をいかにかいくぐって脱出するか、というストーリイです。
やろうと思えばいくらでも暴力的な方法で脱出できると思うんだけどなあ。閉鎖空間に登場人物を閉じ込めるシチュエーションの多い石持さんですが、今回はゲームとしての前提が緩すぎるような気がしました。
犯人当てに主眼を置く作家さんなので、という理由付けにはならないですよね。すごい即効性のある毒が出てくるのですが、その毒ってなんなの?どうやって手に入れたの?
胡椒で目くらまし、ってそんなに有効性があるとは思えない。
とツッコミどころ満載です。
それなりにスリリングではあるのですが、リアリティさに疑問を抱いてしまうと、どうにも物語に没入できませんでした。
犯人グループ(特に主犯)の卑劣さに反吐が出る思いでした。
そういう憂さが晴れるような展開になればよかったんですが、動機や結末を含めて、なんだかモヤモヤした読後感でした。
コメント 0