吉田修一さん「平成猿蟹合戦図」 [本☆☆]
吉田修一さんの作品はどれも読んでいるのですが、タイトルでどうにも興が湧かずにいました。勘が当たったかどうかは…。
歌舞伎町のバーテンダー・浜本純平は、ある日、ひき逃げ現場に居あわせる。事故の背景にある複雑な人間関係、序々に明らかになる悲しい過去。しかし、なぜか純平は国政選挙に打って出ることになり……。爽快な読後感に満ちた著者の新たな代表作!
(出版社HPより)
住まいも年齢も性別も職業も異なる人々を描いた群像劇です。
老若男女ばらばらな人たちが結集して東北から国政選挙に打って出て、大物代議士に挑むという物語です。
東京・歌舞伎町、長崎・五島、秋田・大館と場面転換もスムーズです。場面の描写や言葉(方言)でまったく違和感なくその場にいるように感じました。
悪役を含めた登場人物たちも個性があり、役割があり、物語の枠組みの中できっちり動いているという印象で、いい意味でも悪い意味でも予定調和を感じてしまいました。
吉田さんの筆力に改めて感服しましたが、枠を突き抜けるものがなく、あまり印象に残らなかった、という読後感でした。
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