朝井リョウさん「少女は卒業しない」 [本☆☆☆]
とある地方高校の卒業式の一日を7人の少女の視点から描いた連作短編集です。
今、青春小説を書かせたら朝井さんの右に出る者はいないかもしれません。
「エンドロールが始まる」「屋上は青」「在校生代表」「寺田の足の甲はキャベツ」「四拍子をもう一度」「ふたりの背景」「夜明けの中心」の7編が収録されています。
今日、わたしは「さよなら」をする。図書館の優しい先生と、退学してしまった幼馴染と、生徒会の先輩と、部内公認の彼氏と、自分だけが知っていた歌声と、たった一人の友達と、そして、胸に詰まったままの、この想いと―。別の高校との合併で、翌日には校舎が取り壊される地方の高校、最後の卒業式の一日を、七人の少女の視点から描く。青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。
(「BOOK」データベースより)
廃校となる高校の最後の卒業式という舞台設定がいいです。校舎が明日にはなくなってしまう、母校と呼べるものがなくなってしまうということが卒業式というイベントを盛り上げているように感じました。
それぞれの作品の主人公の女子高校生の心理描写が個性を持って上手く描けていると感じました。セリフはいたって無個性で表面的なのに、内面では実にめまぐるしく多彩な感情がうねっている様が描かれています。
朝井さんは男性なのに。
最初の「エンドロールが始まる」で恋する女子のせつなさ・いじらしさに一気に引きずり込まれました。
「在校生代表」の思い切った仕掛けと告白は面白かったです。
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