吉田修一さん「路」 [本☆☆☆]
台湾新幹線の着工・敷設から開業までをプロジェクトに関わる日本人と台湾人を描いた作品です。
作者の台湾への愛情を感じる作品になっています。
1999年、台湾に日本の新幹線が走ることになり、入社4年目の商社員、多田春香は現地への出向が決まった。春香には忘れられない思い出があった。台湾を旅した学生時代、よく知らないまま一日を一緒に過ごした青年がいた。連絡先をなくし、それ以後ずっと会えないままだった……。台湾と日本の仕事のやり方の違いに翻弄される日本人商社員、車輛工場の建設をグアバ畑の中から眺めていた台湾人学生、台湾で生まれ育ち終戦後に日本に帰ってきた日本人老人、そして日本に留学し建築士として日本で働く台湾人青年。
それぞれをめぐる深いドラマがあり、それらが台湾新幹線の着工から開業までの大きなプロジェクトに絡んでいきます。政治では問題を抱えていても、日本と台湾の間にしっかりと育まれた個人の絆を、台湾の風土とともに色鮮やかに描く『路(ルウ)』。大きな感動を呼ぶ、吉田修一さんの渾身の力作です。
(出版社HPより)
多田春香と劉人豪(エリック)という若い二人の出会い~すれ違い~再会という物語を中心とした、様々な年代の日本人・台湾人たちの群像劇です。
台湾の自然・風土・文化といったものが色濃く描写されていると思いますし、台湾で生まれて終戦時に日本に引き揚げてきた人たちを通して歴史的な日本と台湾の関わりといったものも描かれています。
数日間、それも台北だけの滞在でしたが、気候も食べ物も人々も魅力的でした。そんな個人的な好意的な気持ちもあると思いますが、この作品に同じ空気を感じました。
多分ですが、吉田さんも親近感や好意を抱いているのではないでしょうか。
数年という時間の中でのトピック的な章立てのせいか、深堀りが足りない気もしますが、気持ちのいい読後感がありました。
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