彩瀬まるさん「骨を彩る」 [本☆☆☆]
本屋で見かけて、タイトルに惹かれて読んでみました。
「指のたより」「古生代のバームロール」「ばらばら」「ハライソ」「やわらかい骨」の5編が収録されています。
十年前に妻を失うも、最近心揺れる女性に出会った津村。しかし罪悪感で喪失からの一歩を踏み出せずにいた。そんな中、遺された手帳に「だれもわかってくれない」という妻の言葉を見つけ……。彼女はどんな気持ちで死んでいったのか――。わからない、取り戻せない、どうしようもない。心に「ない」を抱える人々を痛いほど繊細に描いた代表作。
(出版社HPより)
連作ではなく、リレー形式とでもいえばいいんでしょうか。
作品間でひそかな繋がりがあり、やがては「輪」になります。こういうちょっとした仕掛けに気付くと読んでいて楽しいです。
それぞれの作品も沁みます。
おおきな出来事が起きるわけでもなく、日常のものごとが描かれるのですが、登場人物の心情の起伏といったものが簡潔に適切に描写されます。
共通するテーマは「喪失」だと思いますが、重さを感じさせない作品集です。
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