宮部みゆきさん「荒神」 [本☆☆]
こってこてのCGいっぱいの映画化を狙ったような時代小説です。
人間の業を描きたかったのかもしれませんが、陰惨さだけが残りました。
時は元禄、東北の小藩の山村が、一夜にして壊滅した。隣り合い、いがみ合う二藩の思惑が交錯する地で起きた厄災。永津野藩主の側近を務める曽谷弾正の妹・朱音は、村から逃げ延びた少年を助けるが、語られた真相は想像を絶するものだった……。太平の世にあっても常に争いの火種を抱える人びと。その人間が生み出した「悪」に対し、民草はいかに立ち向かうのか。宮部みゆき時代小説の到達点。
(出版社HPより)
大勢の人間が犠牲になるんですが、読んでいても読み終わっても「重み」というものが感じられなかったのはなぜなんだろう。ゲームやアニメや特撮映画を見ているような感覚を覚えました。
前半まではよかったです。
元は一つだった反目する2つの藩の歴史と、お家騒動を抱える香山藩、藩主側近の曽谷弾正による圧政にあえぐ永津野藩、それぞれの内情が語られます。
多くの登場人物たちの背景や抱える問題が違和感なく描かれて、数は多いんですが誰が誰だか…という戸惑いはありませんでした。
香山藩の開拓村が一夜にして壊滅し、救援に駆け付けた藩士たちもが消息不明になる事態が起きたことから物語が加速します。
香山藩の領民の蓑吉や藩士の小日向直弥と、藩境の村に暮らす曽谷弾正の妹の朱音、居候の用心棒・榊田宗栄や絵師の菊地圓秀といった面々が突如現れた正体不明の怪物に立ち向かいます。
圧倒的な能力を持つ怪物の前に犠牲者が増える一方で、怪物の特徴や特性が徐々に明らかになり、鎮める(滅ぼすではないところが日本的)までの展開に追い詰められた人間が発揮する知恵と勇敢さを感じました。
さすが、宮部さんと思いつつも、本の厚さに比例しない軽さのようなものが読後感として残りました。
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