東川篤哉さん「さらば愛しき魔法使い」 [本☆☆]
「魔法使いマリィ」シリーズも終わりかな、というタイトルですが…。シリーズ第3弾です。
「魔法使いと偽りのドライブ」「魔法使いと聖夜の贈り物」「魔法使いと血文字の罠」「魔法使いとバリスタの企み」の4編が収められています。
八王子署の若手刑事・小山田聡介の家に住み込む家政婦の少女マリィ。彼女は魔法で犯人が分かるが、それじゃあ証拠にならないから逮捕できない。聡介の意外に冴えた脳細胞が動き出す。「はじめに犯人が分かり、あとから推理する」という倒叙法ミステリーの傑作が、「魔法使いのキュートな少女」という奇抜で魅力的なキャラクター設定から生み出される。美人警部の上司に蹴られることを喜びとする一見ヘタレな刑事・聡介の、八王子近辺の平和を守る名推理もみどころ。
今回もアリバイ崩しに、ダイイングメッセージ解読にと、派手な大活躍をする聡介とマリィ。それに目をつけたオカルト誌「マー」が、二人につきまとう。マリィの魔法を嗅ぎつけられたら、二人のコンビは消滅の危機か? そして八王子の未来はどうなる!
(出版社HPより)
全体の構成は読者はあらかじめ犯人が分かっている叙述トリックと呼ばれるもので、聡介はマリィの魔法で犯人がわかるのですが、その魔法が見事にポイントを外したものばかりで証拠もトリックも分かりません。
そこから推理力を働かせるのは聡介で、なんだか刑事の勘や実力が上がっている気がします。
ミステリとしてはツボを押さえたもので、もはや安定の東川さんとでもいいましょうか。
それだけに物足りなさも残るんですが。
バカミスの「バカ」は控えめです。
聡介の上司で39歳独身の椿木綾乃警部は、容疑者が独身イケメンだと職務そっちのけですぐに惚れてしまうというパターンは健在です。
今回は「苗字が欲しい」というマリィの希望と、結婚したくない聡介の目に見えない戦いが繰り広げられます。
表題に『さらば』とありますが、結末が唐突すぎてやや消化不良でした。
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