畠中恵さん「ひとめぼれ」 [本☆☆]
「まんまこと」シリーズの第6弾です。
同心見習いの吉五郎の義父・相馬小十郎が全編からんできます。強面でとっつきにくく真面目一徹ながら、なかなかに人情深く魅力的な人物のようです。
「わかれみち」「昔の約束あり」「言祝ぎ」「黒煙」「心の底」「ひとめぼれ」の6編が収められています。
札差の娘と揉めて上方へ追いやられた男。その思わぬ反撃とは(「わかれみち」)。盛り場で喧伝された約束が、同心一家に再び波紋を呼び起こす(「昔の約束あり」)。麻之助の亡き妻に似た女にもたらされた三つの縁談の相手とは(「言祝ぎ」)。火事現場で双子を救った麻之助は、新たな騒動に巻き込まれる(「黒煙」)。行方不明の男を探すため、麻之助は東海道へと旅立とうとする。そして新たな出会いが?(「心の底」)。沽券が盗まれた料理屋から、一葉が消えてしまったのは何故か(「ひとめぼれ」)。
いつの世も思い通りにならない、人の生死と色事。泣きたいときほど泣けない、「まんまこと」ワールド、慟哭の第六弾。
(出版社HPより)
1話目の「わかれみち」で大倉屋の番頭の四郎兵衛とお由有、八木清十郎とお安の2組の祝いの席が設けられ、めでたい始まりだったのですが、その後はスリリングな物語あり、やきもきする展開ありと楽しめました。
江戸時代の階級社会によるままならない恋や結婚模様が描かれます。
庶民が武家に嫁入りするには、いったん他の武家の養女になってしきたりや作法を教え込まれるなど。一方、男性の場合、生活に困窮する安くはない旗本株を買って武家になる手立てもありました。
それでも縁遠かったり、気持ちが寄り添えなかったりというのはいつの時代も同じですね。
「お気楽な」という形容詞がつく麻之助ですが、今回は大立ち回りあり、火事場で人命救助ありと素の(?)姿を見せてくれます。
「ひとめぼれ」の終幕のシーンは小十郎の一人娘・一葉があまりに残酷な現実を突きつけられ、読んでいて辛かったです。
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