大倉崇裕さん「福家警部補の追及」 [本☆☆]
シリーズ第4弾です。今回は今まで以上の難事件です。
「未完の頂上」「幸福の代償」の中編2作が収められています。
狩秋人は未踏峰チャムガランガへの挑戦を控え、準備に余念がない。勇名を馳せた登山家の父・義之がついに制覇できなかった山である。義之は息子に夢を託して引退、この期に及んで登山隊の後援をやめると言った会社重役を殺害する(「未完の頂上」)。動物をこよなく愛する佐々千尋はペットショップの経営者。血の繋がらない弟は悪徳ブリーダーで、千尋の店が建っている敷地を売ろうとする。そもそも動物虐待の悪行に怒り心頭だった千尋は、弟を亡き者に……(「幸福の代償」)。『福家警部補の挨拶』に始まる、倒叙形式の本格ミステリ第四集。
(出版社HPより)
どちらの犯人も、夢や目標のために追い詰められてやむにやまれぬ犯行ではあるんですが、準備も計画も周到で、齟齬はあるものの決定的な手掛かりはなく、逮捕にはかなりハードルが高いように思いました。
ですので「未完の頂上」は真犯人の自供に至るプロセスで相手の弱みに付け込むという福家警部補のやり方に違和感を覚えました。
とはいえ、登山事故(「未完の頂上」)や心中事件(「幸福の代償」)に偽装された事件を全く別の捉え方をする福家警部補の着眼点は相変わらずです。
相変わらずといえば警官に見えない小柄でメガネ姿の容姿(しょっちゅう事務員に間違われるし、現場では警備の警官に追い払われる。でもって警察手帳を失くすというお決まりのパターン)と不眠不休で働く体力とのギャップには毎度ながらおかしみを覚えます。
福家警部補って何者なんでしょう。以前の作品ではサブカルに異常に詳しく、今回は登山やボルダリング、ゴルフの腕前が上級者クラスって…。
学生時代に事件に遭遇して解決するっていうスピンオフ作品を読んでみたいです。
「幸福の代償」では須藤警部が登場します。「警視庁いきもの係」シリーズですね。名前は出ませんでしたが福家警部補は薄圭子巡査とも顔見知りみたいです。こちらはコラボ作品を期待しちゃいます。
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