吉永南央さん「黄色い実」 [本☆]
シリーズ第7弾です。久実ちゃん、ええ子や。
「小春日和」「颪の夜」「宿り木」「帽子と嵐」「黄色い実」の5編が収められています。
お草さんが営むコーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」で片腕として働いている頼れる店員・久実。
なぜか男っ気のない久実にもついに春が……!?
浮き立つ店に、元アイドルの女性が店の敷地内で暴行を受けたという衝撃のニュースが飛び込んでくる。
容疑者は地元名士の息子。
久実の様子がおかしいことに気づいたお草。
そして、暴行現場で拾った「あるもの」がお草と久実を悩ませることになる。
「私、いつから加害者になったんだろう」
──心に小さな勇気の火を灯す人気シリーズ第7弾。
(出版社HPより)
お草さんシリーズは時に社会問題を取り上げ、シビアな現実を突きつけられることもあるんですが、本作は受け入れられないものでした。シビアすぎる内容でした。
目を逸らしてはならない問題ではあるのですが、個人的に抱いているこのシリーズの世界観からは大きく逸脱しているように感じました。
元アイドルで地元に帰って会社員をしているオリエが小蔵屋の敷地内で暴行被害を訴え、その相手はお草さんが就職を斡旋した名士の息子だということで、お草さんも否応もなく事件に巻き込まれていきます。
被害女性が訴えることで二次被害に遭うというのは以前からありましたが、口コミでの地域内に収まっていたものが、SNSの発達で拍車をかけているように思います。
それが地方都市であれば尚更。
どんな文明の利器も結局はそれを使う人間次第で、発明者の理想とは遠くかけ離れたあさましさや残虐さに満ちてしまうのは、それがいや増しているように感じるのは自分だけでしょうか。
(樋口有介さんなら登場人物に「社会のせいさ」とでも言わせそうです)
次作はもう少し気分が上向きになる作品を期待します。
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