彩瀬まるさん「眠れない夜は体を脱いで」 [本☆☆☆]
陳腐ですが、「繊細さ」を感じる短編集です。
「小鳥の爪先」「あざが薄れるころ」「マリアを愛する」「鮮やかな熱病」「真夜中のストーリー」の5編が収められています。
自分でいることに窮屈さを覚えた人々が夜な夜な掲示板に集い…。“私”とうまくつきあえない、悩める人々を解放する物語。「小鳥の爪先」「マリアを愛する」など全5編を収録する。
自分の顔がしっくりこない男子高校生。五十過ぎに始めた合気道で若い男の子とペアを組むことになった会社員。恋人の元カノの存在に拘泥する女子大生。妻も部下も、なぜ自分を不快にさせるのかと苛立つ銀行支店長。彼らは「手の画像を見せて」という不思議なネット掲示板に辿り着く……。「私」という違和感に優しく寄り添う物語。
(「BOOK」データベースより)
内面や気持ちの移り変わりのこまやかな描写がそれぞれの登場人物に共感を覚えます。
自他の評価のギャップやこうありたい理想とのギャップなど、いくつになっても悩む普遍的なテーマだと思います。
そんな思いを抱えた年齢も職業も異なる彼らが見つけたのがネットの掲示板でした。「手の画像を見せて」というメッセージと、様々な人が投稿した手の写真。
登場人物たちがどんなリアクションをするのか、どんな印象を持つのかが性格が出ていて楽しかったです。
そして、連作短編らしく、最終編ではスレ主が登場して予想外のことが明かされます。
その辺の構成や展開が巧みです。
タイトルの「眠れない夜は体を脱いで」に込められた意味が沁みました。
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