大崎善生さん「孤独か、それに等しいもの」 [本☆☆☆]
読んでいて、みぞおちの辺りに重く異物感を感じました。
胃を締め付けられるようでもなく、きりきりと突かれているわけでもなく、ずんと重いものが
みぞおちの辺りにただある感じです。
母親、妹、恋人の死を契機に精神のバランスを崩してしまう人々の話が描かれています。
苦しみにのたうつ様は(だんだん食傷気味になってしまうとはいえ)読んでいても目を背けて
しまいたくなるものです。
喪失というのはどのような形であるにしろ、誰にでも訪れるものだと思います。
その深さや衝撃の程度によっても違うと思いますし、支えてくれる人の存在にも依ると
思います。
読んでいて感じた異物感は、自分にも起こり得る喪失感を想像してのものだったのかも
しれません。大切な人、かけがえのない人をある日突然、予想もしない形で失ってしまったら。
作中の人物に自分を投影させ、重苦しいものが膨らんだのかもしれません。
救済の形は様々に現れます。とっかかりを掴んで立ち直る契機を見つけます。
記憶から拭い去ることはできないけれども、過去からの束縛から解き放たれることで救われ
ます。それは包み込んでくれる人やイメージだったりします。
重く暗く切ないストーリーなのですが、どの作品も最後は少し晴れやかになりました。
耳に空けたピアス穴、赤いスニーカー、空気の結晶など、キーワード(キーアイテム)の
使われ方が印象的でした。
2006-12-14 20:27
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