恩田陸さん「クレオパトラの夢」 [本☆☆☆]
前作「MAZE」は個人的にはあまり…だったのですが、今作はとても面白かったです。
幾人かの登場人物が交錯し、H市(と実名を伏せる必要があったのかな。有名な観光名所が
出てきてしまうので、モロバレ)を舞台にアメリカの製薬会社の研究員である神原恵弥を中心として
「クレオパトラ」をめぐっての腹のさぐり合いが繰り広げられます。
神原恵弥が調査目的としている「クレオパトラ」とはなにか、不倫相手を追ってH市に転居した
双子の妹の和見はなにを隠しているのか、その不倫相手で恵弥がH市に着く以前に事故死した
という若槻博士の死の真相は、などなど読み進むたびに謎が増えていきます。手掛かりは、若槻
博士の家にあった2枚の地図だけ。×印の付けられた現代のものと、昭和9年のもの。
更に若槻博士の友人や妻などが複雑に絡み合って、誰もが手持ちのカードを探り合う。誰が味方か
敵かすらはっきりしない。
そんな中で恵弥は失踪した和見の探索と「クレオパトラ」の真の姿を求めて見知らぬ雪の街を
歩き回ります。
特段、大掛かりなアクションや意表をつく展開があるわけではありませんが、登場人物の会話に
よって謎が解き明かされていく過程はミステリの醍醐味が詰まっていて面白いと思います。
作品中の台詞にもあるのですが、結末はやや感傷的。
因みに、「クレオパトラ」の正体については『MASTERキートン』5巻で読んだ記憶があったので
昭和9年のH市の歴史を恵弥が調べるくだりで正体が分かってしまいました。つまらん…σT_T
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