三浦しをんさん「むかしのはなし」 [本☆☆☆]
連作短編集です。始めのうちは気がつきませんでしたが、やがて繋がりに気がつくような構成になっています。三浦しをんさん、相変わらずお上手。
かぐや姫や桃太郎など有名な昔話を題材に、そのまま現代に置き換えるという安直なものではなく、三浦さんなりの味付けをしているので、単純に似ているところ、読み終わった後で気がつくところ、様々です。各編の読む楽しみだと思います。
その一方で、個々の物語が一つの大きな出来事に包括されていくことで短編集が一体感を持つように思えてきます。そしてラストに向けて進んでいきます。
それぞれの作品において、それぞれの登場人物たちの生活の営みが描かれています。その背景には諦念、後悔など様々な感情が巻き起こっています。ただ、それに力強さのようなものが感じられなかったのが残念でした。
なにが「むかしのはなし」なのかが、最後に明かされます。
さて、この「昔話」は語り継がれる人々のないままにどこへいくのだろう。読み終わった後、そんな思いを抱いてしまいました。それでも語らずにはいられないんだろうなあ、とも。
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