瀬尾まいこさん「優しい音楽」 [本☆☆☆]
優しい音楽 (双葉文庫 せ 8-1) (双葉文庫 せ 8-1)
- 作者: 瀬尾 まいこ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/04/10
- メディア: 文庫
瀬尾まいこさんの作品には優しさと悲しさが同居しているように思えます。それはこの3つの中編を読んでも感じました。
表題作の「優しい音楽」「タイムラグ」「がらくた効果」の3編です。
「優しい音楽」は、とりたてて見栄えもよくない僕に女子大生の千波ちゃんが接近するところから始まります。不自然ながらも恋人同士となった二人ですが、千波ちゃんはなかなか両親に紹介してくれません。そして、とうとう両親を訪問するその日がやってきました。しかし、僕を見た両親の反応は。。。
「タイムラグ」は、不倫相手の夫婦旅行の間、その娘を預かることになったOLの深雪。次第に打ち解けていった二人に、娘の佐菜が言い出した願い事とは。しっかり者の小学生の佐菜が抱える周囲の人への優しい思いがじわりと沁みました。
「がらくた効果」は、のべつまくなしにいろいろなものを買い込んだり、拾ってくる同棲相手のはな子がある日「拾ってきた」ものとは。語り手の章太郎の優柔不断さとはな子の奔放さという対照的な性格が物語を面白くしていると思います。
安直ながらも、人はなにか(ささいなことでも)きっかけで変われるんじゃないか、そう思いました。そのためには、自らなにかをする、誰かにしてあげる(決して押し付けではなく)ことが大事なのかもしれないと思いました。
総じて言えば、この作品集のどれも実際にはありえない話ではあると思うのですが、リアリティを求める場合とそうである必要のない場合が小説にはあって、この短編集は後者だと思います。だからこそ、心を動かされる作品となったんだと思うのです。
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