横山秀夫さん「顔 FACE」 [本☆☆☆]
D県警シリーズの短編集「陰の季節」に収録の「黒い線」の登場人物だった平野瑞穂巡査を主役に据えた短編集です。「黒い線」のその後という位置付けになります。
「魔女狩り」、「決別の春」、「疑惑のデッサン」、「共犯者」、「心の銃口」の5つの短編から構成されています。
前作「黒い線」で似顔絵の捏造を強要された瑞穂は休職後に閑職へと追いやられます。自分の存在意義を見失い、それでも職務に励む中で新聞記者や上司や同僚などが関わる警察内外の様々な事件に遭遇します。事件に対して瑞穂は鋭い観察力を発揮します。その中で瑞穂は自分の目標を見出していきます。ミステリであるとともに、23歳とまだ若い瑞穂の挫折と再生、成長の物語でもあります。
「陰の季節」もそうでしたが、本作でも組織のメンツや男性社会であり続けようとする警察内部(というか男性警官)の婦人警官への蔑視や軋轢、それに対する彼女たちの苦闘と希望が描かれています。
タイトルに込められた意味も深く感じる小説でした。
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