伊坂幸太郎さん「フィッシュストーリー」 [本☆☆☆]
伊坂幸太郎さんの短編集です。どれも伊坂さんらしい軽妙な語り口と意表を衝くエンディングとなっていて、読んでいて楽しくなります。
年代の離れた4つの短編からなっています。「動物園のエンジン」(2001年)、「サクリファイス」(2004年)、「フィッシュストーリー」(2005年)、「ポテチ」(書き下ろし)。
なかでも表題作の「フィッシュストーリー」がいいですね。売れないロックバンドが出した最後の曲のちょっとした趣向(間奏の間の1分間の空白)が引き金になって、10年後・20年後・30年後につながる出来事、それも時系列も登場人物もバラバラなために一呼吸置いてからパズルのピースが合わさったように感じられる、構成の妙が際立って感じられます。
その空白がなんだったのか、という事実にも心動かされました。
また、他の作品にも登場している黒澤がメイン・サブで出ている「サクリファイス」「ポテチ」もいい味わいです。
「サクリファイス」は山奥の村に残された奇妙な風習が下敷きになっているのですが、謎そのものよりも村人たちが皆マイペースな感じで楽しいです。
「ポテチ」は暢気な空き巣の今村と同居人の大西がメインですが、今村の母親が圧倒的な存在感を見せます。この母親なくしてこの作品はなかったと思います。様々に仕掛けられた伏線も、思わずうるっとくるラストもいいです。
表紙は伊坂さんが作品のインスピレーションを得たというもので、なるほどと思いました。もっとも、これを見て自分がインスピレーションがわくかというと、きっと無理だろうな(^口^)
昨年映画化されたのですが、観ていなかったのでDVDで観てみたいと思います。
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