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石持浅海さん「扉は閉ざされたまま」 [本☆☆☆]


扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2008/02/08
  • メディア: 文庫



警察が介入できない=意図的に作られた密室が引き起こすミステリというのを石持さんは得意としているようです。
2006年の「このミステリーがすごい!」国内編第2位になった作品です。ちなみに第1位は東野圭吾さん『容疑者Xの献身』…どちらも倒叙ミステリですね。

大学時代のサークルメンバー7名が数年振りに成城にある超高級ペンションに集合します。
そこで伏見亮輔は後輩の新山を殺害します。そして事故死に見せかける工作をした後で部屋を密室状態にします。 夜になっても姿を見せない新山の身をメンバーは案じます。新山の部屋のドアの前で呼んでも返事はなく、合鍵もない。ドアを壊そうにも文化財もののドアはおよそ替えのきかない代物。警備システムは万全で、窓ガラスを割ったら高級住宅街に警報が鳴り響くために侵入もできない。そもそもペンションのオーナーは欧州で療養中のために連絡が取れない。
完全犯罪と時間稼ぎを伏見が確信したそのとき、彼の前に碓井優佳が立ちはだかります。伏見と優佳はかつては互いに惹かれあった仲でした。
伏見と優佳の間に頭脳戦と心理戦が始まります。

倒叙ミステリなので、犯人(伏見)は分かっていて、殺害の手口も密室作成の過程もオープンになっています。
その前提で、探偵(優佳)が状況や伏見の発言や手掛かりから、いかに真相にたどり着くか、完全犯罪を看破するか、伏見との駆け引きや頭脳戦が緊張感があり、展開が読めませんでした。
読み手もまた仕掛けられた伏線や鍵を読み取って真の目的に達することができるか、殺害の動機はなにかを推理するという楽しみもあります。

新山殺害の動機と密室を作り出した理由については、「そんな理由で?」と思ってしまいました。
伏見との意識の差ではあるんですが、そんな理由でリスクのあることをするかなあ、と思ってしまいました。

伏見と優佳との間には単純な犯人と探偵という関係だけでない、かつては惹かれあった関係というのがストーリイ展開にいい「歪み」を与えていると思いました。
周囲からは似た者同士と言われている伏見と優佳ですが、伏見の感じた「冷静だが熱い」伏見と「冷静で冷たい」優佳との間の温度差がうまく描かれているなあ、と思いました。まさか、それが要因で…となるとは思いもしませんでした。

どれを読んでもレベルの高い石持さんの作品ですが、なかでも完成度の高さを感じた作品でした。

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