恩田陸さん「不連続の世界」

不連続の世界 (幻冬舎文庫)

• 作者: 恩田 陸
• 出版社/メーカー: 幻冬舎
• 発売日: 2011/10/12
• メディア: 文庫

旅記もの、とでもいえばいいでしょうか。なんとか観光協会が協賛してそう(笑)
以前にも「Ｈ市」とか「K市」とか名前は伏せていたけど読めばすぐ分かる観光地を舞台にした小説がありましたが、今回は実名で出ています。

「木守り男」「悪魔を憐れむ歌」「幻影キネマ」「砂丘ピクニック」「夜明けのガスパール」の5本の短編が収められています。

『月の裏側』に出ていた塚崎多聞が再登場します。この作品は「九州の水郷の街・箭納倉」が舞台でした。…この人はトラベルファンタジー専業登場人物？
レコード会社の音楽ディレクターである塚崎多聞が仕事関係者や友人などに触発されたり同行したりした旅先(「夜明けのガスパール」は旅の途中)で出会う出来事が物語の幹になっています。

謎が提示され、それを解こうと追い求めていくうちに現れる結末に磐石だと思っていた足元が不意に不確かなものになっていた、という捉えどころのない不安感に包まれます。

恩田さんの作品らしく、ちょっぴりホラーで、どこか懐かしさを感じるファンタジーのあるミステリになっています。