辻村深月さん「サクラ咲く」 [本☆☆☆]
ジュブナイル小説と呼んでしまうには勿体ないような作品です。
「約束の場所、約束の時間」「サクラ咲く」「世界で一番美しい宝石」の3編です。
塚原マチは本好きで気弱な中学一年生。ある日、図書館で本をめくっていると一枚の便せんが落ちた。そこには『サクラチル』という文字が。一体誰がこれを? やがて始まった顔の見えない相手との便せん越しの交流は、二人の距離を近付けていく。(「サクラ咲く」)輝きに満ちた喜びや、声にならない叫びが織りなす青春のシーンをみずみずしく描き出す。表題作含む三編の傑作集。
(出版社HPより)
はじめの2編は進研ゼミに連載していた作品です。そのせいなのか、辻村さんらしい苦さや毒々しさといったものはありませんでした。とことん青春。たまにはそれもいいかな、と思いました。
「約束の場所、約束の時間」「サクラ咲く」では中学生が友人と出会うことで少しずつ世界を広げていく様子が瑞々しく描かれています。心の浄化になりそうな。
その意味では最後の「世界で一番美しい宝石」を読んだときに「辻村さんらしさ」が出ていて妙に安心しました。
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