新城カズマさん「サマー/タイム/トラベラー 2」 [本☆☆]
がっつりタイムトラベラーものです。
好き嫌いの分かれる小説ですが、個人的には好きな部類です。
無数の時間SFを分析し、県道での跳躍実験をくりかえすなかで、自らの能力を自覚していく悠有。いっぽう、辺里の町では不穏な出来事が進行していた──続発する放火事件と謎の脅迫状。やがてぼくらは、悠有が一度も過去へ跳ばないことに気づいてゆく。そして花火大会の夜、悠有が姿を消した──。
(出版社HPより)
地方都市である辺里市に暮らす5人の高校生、卓人、悠有、響子、コージン、涼によるひと夏の物語です。
頭脳明晰な高校生たちが刺激の少ない閉鎖的な地方都市に辟易しながら、悠有の身に起きたタイムトラベル(というか、タイムスリップ)をきっかけに〈時空間跳躍少女開発プロジェクト〉という計画を進めます。
並行して連続放火事件と悠有に宛てられた脅迫状の差出人探しが絡みます。
作中で登場人物たちが膨大な量のSF作品や科学知識を披露しますが、まあ、斜め読みしても大丈夫だと思います。(だいぶページを取っているけど)
姿を消した悠有と”取り残された”仲間たちという終幕が比喩的でもあります。
頭が良くて皮肉屋の主人公や地縁に縛られた友人たちと、数秒間でも未来に進むことのできる悠有という対比はジュブナイル小説として読むこともできると思います。
そんな彼らの屈折具合が切ないです。
ストーリイ的にはシンプルで読後感もよかったです。
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