小林泰三さん「アリス殺し」 [本☆☆]
『不思議の国のアリス』の世界を巧妙に取り込んだファンタジーミステリです。
大逆転劇に「そうきたか」と唸ってしまいます。
大学院生・栗栖川亜理は、最近不思議の国に迷い込んだアリスの夢ばかり見ている。ハンプティ・ダンプティの墜落死に遭遇する夢を見た後大学に行ってみると、キャンパスの屋上から玉子という綽名の博士研究員が墜落死を遂げていた。
次に亜理が見た夢の中で、今度はグリフォンが生牡蠣を喉に詰まらせて窒息死すると、現実でも牡蠣を食べた教授が急死する。
夢の世界の死と現実の死は繋がっているらしい。
不思議の国では、三月兎と頭のおかしい帽子屋が犯人捜しに乗り出していたが、思わぬ展開からアリスは最重要容疑者にされてしまう。もしアリスが死刑になったら、現実世界ではどうなってしまう? 彼女と同じ夢を見ているとわかった同学年の井森とともに、亜理は事件を調べ始めるが……。邪悪で愉快な奇想が彩る、鬼才会心の本格ミステリ
(出版社HPより)
現実世界の人間が『不思議の国のアリス』のキャラクターのアバターとなり、アバターの死が現実世界での死に繋がってしまいます。
そして、連続殺人が発生し、アリスは真犯人を探します。
現実世界の誰がどのキャラクターなのか、ハンプティダンプティ=王子玉男、蜥蜴のビル=井森というふうに暗示されているかと思いきや、それは初めだけ。真犯人の推理と合わせてキャラクター探しもするという二重にミステリが楽しめました。
『不思議の国のアリス』は読んだことがないんですが、不思議の国の住人たちの会話はトンチンカンで笑えるのですが、度を過ぎると冗長で散漫な印象を覚えました。原作もこんな感じなんでしょうか。
真犯人の告発はややご都合主義では?と思いました。
けれども、叙述トリックは巧妙に構築されていて最後まで読まないと真相が明らかにならず翻弄され続けました。
終盤のグロさは小林さんの真骨頂ですが、そこまでしなくても。。。読んでいて「うわぁ」と本を閉じてしまいそうになりました。
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