大倉崇裕さん「オチケン!」 [本☆☆]
表紙が地味だなぁ。
学園ミステリに落語を絡めるだけでなく、落語のネタを解決のヒントに組み込むという手の込んだ仕組みになっています。それだけでなく、部室を巡る駆け引きが連作短編の仕掛けとしてあり二重三重に楽しめます。
「幽霊寿限無」「 馬術部の醜聞 」の2編と「落語ってミステリー!?」(落語に関する蘊蓄を語ったエッセイ)が収められています。
大学に入学早々、廃部の危機に瀕したオチケン(落語研究会)に無理やり入部させられた越智健一。そこで待ち受けていたのは、幽霊が出るという噂の古い部室と、風変わりな二人の先輩だった。落語なんてまったく知らない上、先輩たちに振りまわされ、必修科目の出席もままならない。あげくはサークル間の陰謀に巻き込まれて…。ユーモアと落語のウンチク満載の中篇二篇を収録した連作ミステリー。
(「BOOK」データベースより)
目白にある学同院大学(ああ、あそこね)の落研に入部した(させられた)越智健一が謎を解決する「巻き込まれ」型のミステリです。
部員が2人になると部室を明け渡さなければならないルールがあり、落語研究会の部室を狙う幾つかのサークルが優柔不断な越智健一こと「オチケン」に難題を突き付けます。
それを先輩の岸と中村が出すヒントをもとに解決します。
伏線として語られる落語のネタが謎を解くヒントになっていて、その構成の妙に感心してしまいます。
オチケンを導く岸部長の大学生らしくない、なんとも脱力系な喋りと佇まいがユーモラスながらも一筋縄ではいかないキャラクターも見逃せません。
地味ですが味わいのある作品です。
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