伊坂幸太郎さん「AX」 [本☆☆]
『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』がシリーズ作品だったとは。
なにより構成の妙が楽しめます。
「AX」「BEE」「Crayon」「EXIT」「FINE」の5編が収められています。
最強の殺し屋は――恐妻家。
物騒な奴がまた現れた!
物語の新たな可能性を切り開く、エンタテインメント小説の最高峰!
「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。
兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。
引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。
こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。
(出版社HPより)
伊坂さんの殺し屋が登場するシリーズでは家族(妻と息子)がいるというのは異色だと思います。物語の展開も異色といえば異色だし、張り巡らされた伏線の回収の数々は伊坂さんらしいともいえます。
なにより筋金入りの恐妻家というのが可笑しいです。
殺し屋稼業から足を洗いたい「兜」とそれを止めようとする斡旋人の医者、「兜」と対峙する殺し屋たち、そして「兜」と妻子の三様が各編で展開されます。
おおよそ殺し屋らしくない「兜」(でもしっかりと仕事は遂行する)のキャラクターと、恐妻家っぷりと、そんな夫婦関係をどこか醒めた目で見ながらも的確なフォローに回る息子の様子がエンタメ小説として楽しめます。
傍から見たらそこまでして家族で、夫婦でありたいの、って思うほどなのですが、魚肉ソーセージのくだりや同業者との共感といった場面にに「兜」の家族にかける愛情が感じられるのです。
各編の構成とタイトルの謎については解説で書かれています。なるほど、そういう経緯があったんですね。
それにしても「あの映画」からインスピレーションを得るとは、想像もしませんでした。
コメント 0