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三上延さん「ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~」 [本☆☆☆]


ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)

  • 作者: 三上 延
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/25
  • メディア: 文庫



シリーズ最終巻です。
古書にまつわる謎解きをメインにしたミステリですが、とんでもないものをテーマにもってきました。

ビブリア古書堂に迫る影。太宰治自家用の『晩年』をめぐり、取り引きに訪れた老獪な道具商の男。彼はある一冊の古書を残していく――。
奇妙な縁に導かれ、対峙することになった劇作家ウィリアム・シェイクスピアの古書と謎多き仕掛け。青年店員と美しき女店主は、彼女の祖父によって張り巡らされていた巧妙な罠へと嵌っていくのだった……。
人から人へと受け継がれる古書と、脈々と続く家族の縁。その物語に幕引きのときがおとずれる。
(出版社HPより)

前作から時間が空いたせいか、全体の流れや登場人物を思い出すのに時間がかかってしまいました。

シリーズ当初は古書を巡るミステリでしたが、篠川栞子の祖父の代から始まる因縁や、栞子と母 智恵子の確執といった篠川家にまつわる物事が時間軸の奥行きをもって描かれるようになりました。
シリーズが続いて、飽きがこなかったのもそういった仕掛けがあったからかもしれません。

そうはいっても古書に関する謎解きとからくりはキモであって、十分楽しめるものでした。
とはいえ、トリックは途中で予想のついたものでした。そこがちょっと残念です。

母娘の仲も、栞子と大輔の恋愛も結果的に上手くいってよかったです。
シリーズ初めのころは過剰なラノベ設定が受け入れられずに読むのを断念しようとしたのですが、読み通してよかった。

スピンオフ作品が出るらしいので、古書ミステリが読めるのを楽しみにしています。

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森見登美彦さん「有頂天家族 二代目の帰朝」 [本☆☆☆]


有頂天家族 二代目の帰朝 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 二代目の帰朝 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/04/05
  • メディア: 文庫



有頂天家族の第2弾です。
京都を舞台に、狸と天狗を中心としたドタバタ劇は痛快です。

誇り高き「阿呆の血」が騒ぐ!
天狗や人間にちょっかいを出しては狸界で顰蹙を買っている、京都下鴨家の三男狸・矢三郎は、まあまあ愉快に暮らしている。ところが、老いぼれ天狗・赤玉先生の跡継ぎである“二代目"がイギリスより帰朝すると、平和な街の気配が一変。天狗親子は大喧嘩、狸たちは覇権争い、狸を喰う人間たちは悪巧み、あちこちで多発する片思い……と、京都の街は混迷を極める。
矢三郎の「阿呆の血」が騒ぐ! 一族の誇りをかけて、尊敬する師、愛する者たち、そして毛深き命を守れ! 愛おしさと切なさで落涙必至の感動巨編。
TVアニメ化され、累計32万部突破した大ベストセラー『有頂天家族』。
森見史上、最も壮大で、最も愛の溢れる"あの物語"の第二幕、ついに開幕!
(出版社HPより)

前作は京都を舞台に人に化けて騒動を引き起こす狸たちと傍若無人な天狗という設定になかなかついていけないままに終わってしまったのですが、今作は最初から作品世界に入り込めました。

初っ端から、すっかり天狗としての神通力を失った如意ヶ嶽薬師坊を100年ぶりに倫敦から帰ってきた二代目が打ちのめしてしまうことで物語の波乱を予感します。

狸界では、偽右衛門の座を巡って下鴨家と夷川家のわちゃわちゃした対立や、長男の矢一郎と南禅寺玉瀾の婚姻、主人公の矢三郎と海星の恋の行方などが描かれます。

なんといっても森見作品の魅力はめくるめくファンタジー世界だと思います。
本作では天満屋という男が操る幻術や、市中を爆走する叡山電車など想像力をかきたてるアイテムや描写はどっぷり浸っていたいと思えるほどです。

どうやら三部作のようです。
大団円となるのか、哀れ狸鍋にされてしまうのか(という結末はないとおもうけれど)、どんなストーリイを見せてくれるのでしょう。
楽しみです。

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中山七里さん「テミスの剣」 [本☆☆☆]


テミスの剣 (文春文庫)

テミスの剣 (文春文庫)

  • 作者: 中山 七里
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/03/10
  • メディア: 文庫



単なるミステリにとどまらず、司法制度と冤罪を描く読み応えのある作品です。
重い内容の小説でしたが、一気読みしました。

昭和五十九年、台風の夜。埼玉県浦和市で不動産会社経営の夫婦が殺された。浦和署の若手刑事・渡瀬は、ベテラン刑事の鳴海とコンビを組み、楠木青年への苛烈な聴取の結果、犯行の自白を得るが、楠木は、裁判で供述を一転。しかし、死刑が確定し、楠木は獄中で自殺してしまう。
事件から五年後の平成元年の冬。同一管内で発生した窃盗事件をきっかけに、渡瀬は、昭和五十九年の強盗殺人の真犯人が他にいる可能性に気づく。渡瀬は、警察内部の激しい妨害と戦いながら、過去の事件を洗い直していくが……。
正義とは? 真実とは? 人の真理を暴くのは、はたして法をつかさどる女神テミスが持つ「天秤」なのか?それとも「剣」なのか? 最後に鉄槌を下されるのは?
司法制度に、大きな疑問を投げかける王道社会派ミステリーと、ラストまで二転三転し、読者を翻弄するエンターテイメント性に溢れた本格ミステリーの奇跡の融合がついに実現!!
『連続殺人鬼カエル男』や『贖罪の奏鳴曲』などで中山ファンにはおなじみの渡瀬警部が「刑事の鬼」になるまでの前日譚。そして『静おばあちゃんにおまかせ』で、冴えわたる推理を見せた現役裁判官時代の高遠寺静も登場。
(出版社HPより)

内容は↑の通りです。
しかし、大どんでん返しはそれ以上のボリュームと衝撃があります。

単なる冤罪事件と思いきや、保身と組織防衛のため警察内部の妨害などドロドロした展開が待ち受けています。
それを乗り越えた先に渡瀬を待っていたものは…うう、人間不信に陥りそうです。

被害者家族や無実の罪を着せられた人の家族の苦しみ、良心の呵責に苛まれる警察官、冤罪を生み出してしまった法曹関係者など多くの苦しみ・苦悩が描かれます。
その中を真実を追求して突き進む渡瀬刑事の真摯さ、一途さが闇を切り開いていくようです。

渡瀬刑事の登場する(らしい)『連続殺人鬼カエル男』や『贖罪の奏鳴曲』は未読でした。読まねば。


『静おばあちゃんにおまかせ』の高遠寺静だけでなく孫の高遠寺円も登場します。気付いたときは、ちょっと嬉しかったです。

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彩瀬まるさん「骨を彩る」 [本☆☆☆]


骨を彩る (幻冬舎文庫)

骨を彩る (幻冬舎文庫)

  • 作者: 彩瀬 まる
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/02/07
  • メディア: 文庫



本屋で見かけて、タイトルに惹かれて読んでみました。

「指のたより」「古生代のバームロール」「ばらばら」「ハライソ」「やわらかい骨」の5編が収録されています。

十年前に妻を失うも、最近心揺れる女性に出会った津村。しかし罪悪感で喪失からの一歩を踏み出せずにいた。そんな中、遺された手帳に「だれもわかってくれない」という妻の言葉を見つけ……。彼女はどんな気持ちで死んでいったのか――。わからない、取り戻せない、どうしようもない。心に「ない」を抱える人々を痛いほど繊細に描いた代表作。
(出版社HPより)

連作ではなく、リレー形式とでもいえばいいんでしょうか。
作品間でひそかな繋がりがあり、やがては「輪」になります。こういうちょっとした仕掛けに気付くと読んでいて楽しいです。

それぞれの作品も沁みます。
おおきな出来事が起きるわけでもなく、日常のものごとが描かれるのですが、登場人物の心情の起伏といったものが簡潔に適切に描写されます。

共通するテーマは「喪失」だと思いますが、重さを感じさせない作品集です。

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鏑木蓮さん「イーハトーブ探偵 -ながれたりげにながれたり- [本☆☆☆]


イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり: 賢治の推理手帳I (光文社文庫)

イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり: 賢治の推理手帳I (光文社文庫)

  • 作者: 鏑木 蓮
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/05/13
  • メディア: 文庫



宮澤賢治を探偵役としたミステリです。
読み手の想像の上を行くトリックは見事に騙された感もあります。

「ながれたりげにながれたり」「マコトノ草ノ種マケリ」「かれ草の雪とけたれば」「馬が一疋」の4編が収録されています。

宮澤賢治は、親友の女学校教師・藤原嘉藤治から不思議な話を聞く。教え子の父親が、電信柱が歩くのを見たというのだ。まるで、賢治が書いた童話「月夜のでんしんばしら」のように。さらに教え子自身も川を流れる河童を目撃していた。現場を検分した賢治は、驚くべき推理を繰り広げるのだった。心優しき詩人が、数々の怪事件を鮮やかに解き明かす、新シリーズ始動!
(出版社HPより)

宮澤賢治の作品をモチーフにして、探偵・宮澤賢治が彼の周囲に起こる謎を解き明かします。
トリックとしては思いがけず大掛かりなものが多かったです。

底辺に東北の貧困があります。
知識として知ってはいたものの、日本全体がまだ貧しかったということを考えても、その悲惨さは想像を絶するものがあったと思います。

賢治と友人のカトジこと嘉藤治の岩手弁での会話がわかりにくいものの、近接な親しみを感じます。

続編が楽しみです。

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大倉崇裕さん「福家警部補の報告」 [本☆☆☆]


福家警部補の報告 (創元推理文庫)

福家警部補の報告 (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/12/12
  • メディア: 文庫



福家警部補シリーズ第3弾です。今回も堪能しました。

「禁断の筋書」「少女の沈黙」「女神の微笑」の3つの短編が収められています。

実力派漫画家と辣腕営業部長、同人誌で合作していた二人が迎える不幸な結末(「禁断の筋書」)、少女が目撃証言を拒むのはヤクザの一徹に絆されたせいなのか(「少女の沈黙」)、老夫婦が爆弾で吹き飛ばした三人は銀行を襲う直前だった(「女神の微笑」)──以上三編を収録。『福家警部補の挨拶』『福家警部補の再訪』に続く、倒叙形式の本格ミステリ第三集。好敵手の登場で新たな展開の予感?!
(出版社HPより)

倒叙ミステリといえば刑事コロンボや古畑任三郎が代表的だと思いますが、福家警部補もそのキャラクターと相まってなかなかのものだと思います。

とにかく捜査関係以外の忘れ物・紛失物が多いです。財布を忘れる、警察支給の携帯を忘れる・電源を入れ忘れる、警察手帳がカバンの中に見つからない等々。

小柄で「女子大生にしか見えない」風貌もあって、犯人の懐に潜り込む過程は毎度のパターンですが、そこから犯行につながる手掛かりを見つけ出すヒントの提示は読者の謎解きの楽しみでもあります。

本作では更にキャラが立ってきました。
ディープなオタク気質を覗かせたり、異常なまでに酒に強い体質が明らかになったりと。
福家警部補の魅力が増したように思います。

更にはライバルと思われる人物も登場し、次作が楽しみになりました。

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垣根涼介さん「光秀の定理」 [本☆☆☆]


光秀の定理 (角川文庫)

光秀の定理 (角川文庫)

  • 作者: 垣根 涼介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: 文庫



垣根さんは初読みです。史実とは違った明智光秀像が描かれます。
戦国時代が舞台で戦国武将が主要人物なのに戦の描写がされない斬新な小説です。

永禄3(1560)年、京の街角で三人の男が出会った。食い詰めた兵法者・新九郎。辻博打を生業とする謎の坊主・愚息。そして十兵衛…名家の出ながら落魄し、その再起を図ろうとする明智光秀その人であった。この小さな出逢いが、その後の歴史の大きな流れを形作ってゆく。光秀はなぜ織田信長に破格の待遇で取り立てられ、瞬く間に軍団随一の武将となり得たのか。彼の青春と光芒を高らかなリズムで刻み、乱世の本質を鮮やかに焙り出す新感覚の歴史小説!!
(出版社HPより)

モンティ・ホール問題という確率論を取り入れた小説です。

主に兵法者の新九郎と僧侶の愚息の視点で明智光秀の半生が描かれます。

織田信長の下で出世を遂げていく光秀に対して、剣の道を極める新九郎と豪放磊落な愚息の2人の自由な生き方が対照的です。だからこそ光秀が感じる窮屈さや息苦しさと明智家中を守らねばならない使命感が際立ちます。光秀の置かれた立場を現代的に捉えることもできると思います。

志半ばで倒れた信長がどのような政権を目指していたのか、想像するしかありませんが、終幕で語られる本能寺の変の原因が信長の「異質さ」だったとする新九郎と愚息の推理は面白く読みました。

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平谷美樹さん「採薬使佐平次」 [本☆☆☆]


採薬使佐平次 (角川文庫)

採薬使佐平次 (角川文庫)

  • 作者: 平谷 美樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/10/24
  • メディア: 文庫



初読みの作家さんです。
「採薬使」という言葉に興味を持ち、読んでみました。

大川で斬死体が上がった。吉宗配下の御庭番にして採薬使の植村佐平次は、探索を命じられる。その死体が握りしめていたガラス棒を手がかりとして、事件を追うことに。一体何のために使っていたのか。同じ頃、西国では蝗害が広がり、稲作に深刻な被害をもたらしていた。採薬使の仲間を、原因究明のため江戸を発たせた佐平次だったが―。2つの事案に隠された、驚くべき真相が明らかに。享保の大飢饉の謎に挑む、新解釈時代小説。
(「BOOK」データベースより)

八代将軍 徳川吉宗が創設した採薬使という役職があったそうで、全国を旅して薬草等を採取しつつ、駒場に薬草園を作って栽培をしていたそうです。
で、全国を巡るってなると諸大名の動向を探るなんてこともできるわけで、お庭番を兼ねているという物語になっています。

冷夏と虫害によって西日本を中心として凶作となり100万人近くが餓死したという享保の大飢饉と絡めて幕府の転覆を図る陰謀を明らかにするストーリイは想像を超えた面白さでした。

吉宗と対立するのは歴史好きの方であればご存知の人物です。
史実を踏まえながら、作家の想像力を張り巡らせる構成力と筆力に物語を堪能しました。

シリーズ化されているようなので、是非読んでみたいと思います。

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朝井まかてさん「阿蘭陀西鶴」 [本☆☆☆]


阿蘭陀西鶴 (講談社文庫)

阿蘭陀西鶴 (講談社文庫)

  • 作者: 朝井 まかて
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/11/15
  • メディア: 文庫



井原西鶴の半生を描いた作品です。
盲目の長女おあいを通して描いています。

「好色一代男」「世間胸算用」などの浮世草子で知られる井原西鶴は寛永19年(1642)生まれで、松尾芭蕉や近松門左衛門と同時代を生きた俳諧師でもあり浄瑠璃作者でもあった。俳諧師としては、一昼夜に多数の句を吟ずる矢数俳諧を創始し、2万3500句を休みなく発する興行を打ったこともあるが、その異端ぶりから、「阿蘭陀流」とも呼ばれた。
若くして妻を亡くし、盲目の娘と大坂に暮らしながら、全身全霊をこめて創作に打ち込んだ西鶴。人間大好き、世間に興味津々、数多の騒動を引き起こしつつ、新しいジャンルの作品を次々と発表して300年前のベストセラー作家となった阿蘭陀西鶴の姿を描く、書き下ろし長編時代小説。
芭蕉との確執、近松との交流。娘と二人の奇妙な暮らし。
創作に一切妥協なし。傍迷惑な天才作家・井原西鶴とは何者か?
(出版社HPより)

『好色一代男』『好色五人女』、『日本永代蔵』、『世間胸算用』などをヒットさせた井原西鶴って今でいうベストセラー作家なんですね。

浄瑠璃作者になる前は俳諧師で、一昼夜に2万3500もの句を詠んだというエピソードは驚きです。現代の作家としたら天才的な多作になるんでしょうね。松尾芭蕉や近松門左衛門の名前も出てきて、時代性もわかります。

主題は親子の情愛だと思います。けれども、その情愛はすれ違うばかりです。
天才肌の西鶴が娘に寄せる愛情をおあいは感じ取ることができず、盲目であることもあるのでしょう、口調や言葉のニュアンスだけでは汲み取れないもどかしさを感じました。それは西鶴の日々の行動も影響を与えているんでしょうが。

終始ハイテンションで始終なにかと言葉にする西鶴は、人間的な魅力に溢れて(でも個人的には遠慮したいタイプ)、それでいて繊細さや思いがけない弱さも見せ、朝井さんの筆力を感じました。

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万城目学さん「とっぴんぱらりの風太郎」 [本☆☆☆]


とっぴんぱらりの風太郎 上 (文春文庫)

とっぴんぱらりの風太郎 上 (文春文庫)

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/09/02
  • メディア: 文庫



とっぴんぱらりの風太郎 下 ((文春文庫))

とっぴんぱらりの風太郎 下 ((文春文庫))

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/09/02
  • メディア: 文庫



今度は「ニート忍者」が主人公です。大坂の陣を控えてのキナ臭い京都・大坂を舞台にファンタジーを交えたアクションが繰り広げられます。

天下は豊臣から徳川へ―。重なりあった不運の末に、あえなく伊賀を追い出され、京(みやこ)でぼんくらな日々を送る“ニート忍者”風太郎。その人生は、1個のひょうたんとの出会いを経て、奇妙な方向へ転がっていく。やがて迫る、ふたたびの戦乱の気配。だましだまされ、斬っては斬られ、燃えさかる天守閣を目指す風太郎の前に現れたものとは?
(「BOOK」データベースより)

前半は忍者ものに似つかわしくないのんびりとした雰囲気が漂うのは、伊賀忍者を放逐されて「ニート」になった風太郎と、その相棒の黒弓が醸し出す「ユルさ」かもしれません。
そこに因心居士と名乗る仙術使いの指示で瓢箪を栽培することになり、ユルさが倍増します。

後半になってテンポアップしながらも、どこか力の抜けた感が漂いながらのエンディング。
終幕がリアリズムで終わったのには意表を衝かれました。

忍者小説らしく、祇園界隈を根城にする剣の達人 残菊たちと風太郎たち伊賀忍者のアクションシーンは圧巻でした。

そして、まさか、あの作品の前日譚だったとは!
思いもしませんでした。


ちなみに、「とっぴんぱらり」とは『秋田県地方において、昔話等の物語の最後を締める言葉。結語。後ろに付く言葉は地域や時代によって「~ぷぅ」、「~すったごだっごのぴい」、「~さんしょの実」等のバリエーションが見られる。』だそうです。(http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%C8%A4%C3%A4%D4%A4%F3%A4%D1%A4%E9%A4%EA)

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