東野圭吾さん「危険なビーナス」 [本☆]
スケベな40代のオヤジが美女に翻弄される物語です。(中らずと雖も遠からず、と思っています)
惚れっぽい独身獣医・伯朗が、新たに好きになった相手は、失踪した弟の妻だった。
恋も謎もスリリングな絶品ミステリー!
「最初にいったはずです。彼女には気をつけたほうがいいですよ、と」
独身獣医の伯朗のもとに、かかってきた一本の電話--「初めまして、お義兄様っ」。弟の明人と、最近結婚したというその女性・楓は、明人が失踪したといい、伯朗に手助けを頼む。原因は明人が相続するはずの莫大な遺産なのか。調査を手伝う伯朗は、次第に楓に惹かれていくが。
(出版社HPより)
サクサクと読めるのですが、なにか残ったかと言われると、特に何も…と思ってしまう印象しか残りませんでした。
主人公の伯朗がただただスケベで、そのモチベーションだけで失踪した弟の手掛かりを探る楓の手伝いをするというのは個人的に違和感がありました。(あくまで個人の感想です((笑)))
また、楓の言葉遣いが気になりました。「お義兄様」とか「あの方」とか不自然すぎます。
戦前の上流階級かとツッコミたくなります。
更に言えば、診察時に多用される獣医師としての豆知識が本筋に活かされるのかと思ったら、ただの豆知識だった。
それに、そんなに頻繁に診療所を臨時休業して信用が失墜しないか心配になりました。
リーマン予想とかウラムの螺旋など数学の命題が登場します。ただ、その説明はおざなりで、なぜ素数にそんなに躍起になるのかが素人にはわかりませんでした。
この辺りが東野さんの本領発揮するのでは、と密かに期待していたんですけどね。
柏井寿さん「京都下鴨なぞとき写真帖2 葵祭の車争い」 [本☆☆]
シリーズ第2作目になります。
京都の観光案内とグルメ情報(お店は実在するもの)をちょっとした謎解きに絡めたお気軽に読めるミステリです。
「大路の紅葉」「十日ゑびすの壺」「人形寺の雛人形」「葵祭の車争い」「祇園祭の無言詣」の5編が収められています。
老舗料亭の主人は、じつは人気カメラマンだった!? 『鴨川食堂』で人気の著者による、京都グルメ&名所が満載の連作短編集。
京都の老舗料亭の当主・朱堂旬は、番頭に仕事を任せて遊んでばかり――と周囲には思われているが、じつは人気写真家・金田一ムートンとして、京都の撮影にいそしんでいた。彼のカメラがとらえるのは、葵祭や祇園祭、十日ゑびすや「人形寺」といった、京都名所だけではなく、そこを訪れる人々の秘めた悩み。「松葉」のにしんそばなど、京都グルメでその心を癒しながら、ムートンは彼らの問題を解きほぐしていく。
(出版社HPより)
『鴨川食堂』シリーズに通じる人情ものとでもいえばいいでしょうか。
あちらは謎を持ち込まれる、こちらは謎を解いていくという違いはあります。
前作に引き続き「んなアホな」と思う展開は相変わらずですが、前作に比べると謎の向こうにある人の気持ちや思いといったものが明らかになりカタルシスを覚えました。
一方で主人公である朱堂旬の経歴や、番頭頭の伏原の過去、一切姿を見せない妻など登場人物が細かく描かれていないのは物語を楽しむうえで物足りなさを感じます。
おいおい明らかになるのでしょうか。