伊東潤さん「城をひとつ 戦国北条奇略伝」 [本☆☆]
「奇略伝」かなぁ。
「城をひとつ」「当代無双」「落葉一掃」「一期の名折れ」「幻の軍師」「黄金の城」の6編が収められています。
「城をひとつ、お取りすればよろしいか」、小田原城に現れた男は不敵にそう言い放った。商人に扮して敵地に入り込み、陣中を疑心暗鬼に陥らせ、一気に城を奪い取る――家伝の調略術で関東の覇者・北条氏を支え続けた影の軍師・大藤一族の五代にわたる闘いと北条の命運を決する小田原合戦までを描く圧巻のインテリジェンス合戦記!
(出版社HPより)
『孟徳新書』という曹操が書いたとされる兵法書の中にある秘伝『入込』を用いて敵方に侵入し、後北条軍を勝利に導く使命を帯びた大藤家5代の物語です。
城攻めに際して敵地に侵入し、策略を凝らして味方を勝利に導くという、正体がバレたら生きては帰れない職務を遂行します。
北条家の忍びというと風魔一族が知られていますが、破壊工作や陽動作戦とは少し違います。
相手に取り入って、弱点や単純さ・純粋さを逆手に取って内部崩壊を引き起こします。
「城をひとつ」から「幻の軍師」までは、まさに大藤一族の面目躍如です。
しかし、最終編の「黄金の城」だけは違っていました。秀吉の小田原征伐に完全に受け身に回った北条家に大藤一族ができることはなにもなかったといってもいいかもしれません。
史実を超えることのできない歴史小説の縛りかもしれません。
彩瀬まるさん「眠れない夜は体を脱いで」 [本☆☆☆]
陳腐ですが、「繊細さ」を感じる短編集です。
「小鳥の爪先」「あざが薄れるころ」「マリアを愛する」「鮮やかな熱病」「真夜中のストーリー」の5編が収められています。
自分でいることに窮屈さを覚えた人々が夜な夜な掲示板に集い…。“私”とうまくつきあえない、悩める人々を解放する物語。「小鳥の爪先」「マリアを愛する」など全5編を収録する。
自分の顔がしっくりこない男子高校生。五十過ぎに始めた合気道で若い男の子とペアを組むことになった会社員。恋人の元カノの存在に拘泥する女子大生。妻も部下も、なぜ自分を不快にさせるのかと苛立つ銀行支店長。彼らは「手の画像を見せて」という不思議なネット掲示板に辿り着く……。「私」という違和感に優しく寄り添う物語。
(「BOOK」データベースより)
内面や気持ちの移り変わりのこまやかな描写がそれぞれの登場人物に共感を覚えます。
自他の評価のギャップやこうありたい理想とのギャップなど、いくつになっても悩む普遍的なテーマだと思います。
そんな思いを抱えた年齢も職業も異なる彼らが見つけたのがネットの掲示板でした。「手の画像を見せて」というメッセージと、様々な人が投稿した手の写真。
登場人物たちがどんなリアクションをするのか、どんな印象を持つのかが性格が出ていて楽しかったです。
そして、連作短編らしく、最終編ではスレ主が登場して予想外のことが明かされます。
その辺の構成や展開が巧みです。
タイトルの「眠れない夜は体を脱いで」に込められた意味が沁みました。
金兵衛のお弁当 [お店]
ロケ弁で有名な金兵衛のお弁当をいただきました。
https://www.kinbe.co.jp/
カレイ西京漬け焼き弁当
銀だら西京漬け焼き弁当
どちらも魚が美味しく、総菜も種類はたくさんあって箸休めに合います。
お弁当の種類も多いのでリピーターになりそうです。
ご馳走様でした。
https://www.kinbe.co.jp/
カレイ西京漬け焼き弁当
銀だら西京漬け焼き弁当
どちらも魚が美味しく、総菜も種類はたくさんあって箸休めに合います。
お弁当の種類も多いのでリピーターになりそうです。
ご馳走様でした。
東川篤哉さん「探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます」 [本☆☆]
探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます (幻冬舎文庫)
- 作者: 東川 篤哉
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2020/10/07
- メディア: 文庫
シリーズ第2弾です。うーん、破壊力が減った気がします。
「名探偵、夏休みに浮かれる」「怪盗、溝ノ口に参上す」「便利屋、運動会でしくじる」「名探偵、笑いの神に翻弄される」の4編が収められています。
勤め先のスーパーをクビになり、地元・武蔵新城で『なんでも屋タチバナ』を始めた俺、橘良太。31歳。独身。長所、特になし。特技は寝ること。最近は、隣駅の溝ノ口に住む名探偵一家の主・綾羅木孝三郎がお得意様。娘の綾羅木有紗の子守役を仰せつかっている。しかしこの有紗、10歳にして名探偵を気取っており、俺が依頼された事件にことごとく首を突っ込みたがる。そんなある日、孝三郎の代わりに有紗と高橋さん一家の奥多摩バーベキューに付き添っていたら、なんと溺死体に遭遇してしまい…!?天才美少女探偵&ヘタレ三十路男が難事件に挑む!大人気シリーズ第二弾。爆笑必至のユーモア・ミステリー。
(「BOOK」データベースより)
天才美少女探偵(どうしてもイメージできないんですが)とポンコツヘタレの三十路男のなんでも屋の凸凹コンビが難事件を解決します。
東川さんらしいユーモアあふれる、でもしっかりとミステリも楽しめる作品です。
なかでも「世界的に有名な探偵・綾羅木慶子、 全国的に有名な探偵・綾羅木孝三郎」で夫の孝三郎が凹む毎度のシーンがお気に入りです。
サブタイトル通り、前回は橘良太のイジリに泣きべそをかいていた有紗でしたが、今作では泣き虫を卒業したようです。ちょっと残念。
残念といえば解決編の有紗のロケットキックも抑え目です。ハチャメチャやってほしいなあ。
安部龍太郎さん「宗麟の海」 [本☆☆]
九州六か国を制覇したキリシタン大名の大友宗麟の生涯を描いた歴史小説です。
信長に先んじて海外貿易を行い、硝石、鉛を輸入、鉄砲隊を整備。強大な軍事力と知略で九州六ケ国を制覇。理想の王国を作ろうと夢に向かって駆け抜けた大友宗麟を描く。直木賞作家が新たな構想で挑む歴史小説!
(「BOOK」データベースより)
土地勘もなく、戦国時代の九州の国盗り合戦のプレイヤーがよくわからない、というのもあって読んでみました。
大友宗麟は主に大分を中心に活躍した武将で、大友家の隆興の立役者でした。
大友家の家督争いを経て、南蛮貿易や銀山開発で国力を上げ、九州北部を巡る大内・毛利家との争いなどが描かれます。
際立つのは宗麟の聡明さや先見の明のあるところです。
先天性の持病を抱えているという設定のため、武力よりも知力が自然と育まれたという生い立ちは「二階崩れの変」(自民党の幹事長のことではありません(笑))を引き起こし、それが宗麟のベースとなり、領土拡張のきっかけにもなります。
合戦シーンを描くというよりはヒト・モノ・カネ・情報を丹念に描いたという印象です。
それに加えてキリスト教の頒布と政教分離という課題が現代的だと感じました。
星乃珈琲店 築地店の彦星ブレンド [お店]
築地四丁目交差点を見下ろす立地にある星乃珈琲店 築地店です。
https://www.hoshinocoffee.com/shop.html#tokyo
彦星ブレンドをいただきました。
初めに軽い苦みがあって、コクを感じます。後味はすっきりしているので飽きのこない味わいです。
コク深さに物足りないところはありますが、好みの味です。
交差点の向こう側に見える築地本願寺の特徴的なシルエットを眺めながら、まったりしました。
ご馳走様でした。
https://www.hoshinocoffee.com/shop.html#tokyo
彦星ブレンドをいただきました。
初めに軽い苦みがあって、コクを感じます。後味はすっきりしているので飽きのこない味わいです。
コク深さに物足りないところはありますが、好みの味です。
交差点の向こう側に見える築地本願寺の特徴的なシルエットを眺めながら、まったりしました。
ご馳走様でした。
東野圭吾さん「素敵な日本人」 [本☆☆]
東野さんには珍しいミステリ短編集です。
「正月の決意」「十年目のバレンタインデー」「今夜は一人で雛祭り」「君の瞳に乾杯」「レンタルベビー」「壊れた時計」「サファイアの奇跡」「クリスマスミステリ」「水晶の数珠」の10編が収められています。
一人娘の結婚を案じる父に、娘は雛人形を指差して大丈夫という。そこには亡き妻の秘密が……。(「今夜は一人で雛祭り」)独身女性のエリーが疑似子育て体験用赤ちゃんロボットを借りたところ……。(「レンタルベビー」) 世にも珍しい青色の猫。多くの人間が繁殖を目論むが……。(「サファイアの奇跡」)日本人に馴染み深い四季折々の行事を題材にした4編と、異色のミステリ5編を収録!
(出版社HPより)
1~3作まで読んで各月ごとのお話か、でも10編しかないな、と思っていたらやっぱり初めだけでした。趣向を凝らして、というのは要求しすぎですかね。
いろいろなバリエーションに富んだ作品集です。思いがけないトリックがあったり、近未来SFっぽいものがあったり、想像を超えるオチがあったりと、なかなか楽しめます。
手軽に楽しむにはうってつけの一冊です。
はらだ みずきさん「海が見える家」 [本☆☆]
初読みの作家さんですが、当たりでした。
苦戦した就活でどうにか潜り込んだ先はブラック企業。働き始めて一ヶ月で辞職した。しかし、再就職のアテもなければ蓄えもない。そんな矢先、疎遠にしていた父親の訃報が飛び込んできた。孤独死したのか。どんな生活を送っていたのか。仕事はしていたのか。友人はいたのか。父について何も知らないことに愕然としながらも、文哉は南房総にある父の終の棲家で、遺品整理を進めていく。はじめての海辺の町での暮らし、東京とは違った時間の流れを生きるうちに、文哉の価値観に変化が訪れる。そして文哉は、積極的に父の足跡をたどりはじめた。「あなたにとって、幸せとは何ですか?」と穏やかに問いかけてくる、著者新境地の感動作!
(出版社HPより)
疎遠だった父の死を知らされ、退職後に父が南房総に購入した家で遺品整理をしていくうちに父の過去、終の棲家での暮らしなどを知ることで主人公に前向きな変化が表れていきます。
無口で仕事人間だった父しか知らない文哉が、足跡をたどるうちにその印象が少しずつ変わっていく様がいいです。
また、「ぶっきらぼう」と呼ばれたなんでも屋の和海や地域の人たちとの交流や、はからずも父の仕事を引き継ぐことになってしまった結果、仕事に対する「やりがい」を見出す過程も丁寧に描かれています。
それらが南房総の開放的な空気の中で都会の生活に追い詰められた文哉の心を解きほぐしていきます。
なかでもラストシーンがいいです。
父と同じ景色を見て、沖を振り返ると「少年のように」笑っている━━印象的な情景でした。
朝井まかてさん「残り者」 [本☆☆]
幕末の江戸城明け渡しの影で起こった出来事を創作した作品です。
時は幕末、徳川家に江戸城の明け渡しが命じられる。官軍の襲来を恐れ、女中たちが我先にと脱出を試みる中、大奥に留まった五人の「残り者」がいた。なにゆえ残らねばならなかったのか。それぞれ胸の内を明かした彼女らが起こした思いがけない行動とは??直木賞受賞作『恋歌』と対をなす、激動の時代を生きぬいた女たちの熱い物語。
(「BOOK」データベースより)
江戸城大奥で篤姫、和宮に仕える5人の女性たちが残ってまでやり遂げたかったことを2日間にわたって描かれます。
呉服之間の篤姫付きのりつ、御膳所のお蛸、御三之間のちか、御中臈のふき、呉服之間和宮付きのもみぢの5人です。
年齢も立場も職場も異なる女性たちはそれぞれに背景があって、抱える事情があって、登場人物たちが生身のある人間に描かれています。
着眼点や、大奥の背景・事情(薩摩生まれの篤姫と降嫁した和宮それぞれの女中たちの対立)、ストーリイ展開といい、朝井さんならではの物語が描かれます。
なんといってもラストが秀逸でした。
心穏やかになる読後感でした。
小林聡美さん「聡乃学習」 [本☆☆☆]
小林聡美さんのエッセイ集です。広い意味で「学習」することを描いた気持ちのいい作品です。
間もなく50歳を迎えようとした頃にスタートし、5年に渡って書き続けたエッセイが、ついに書籍化。
トーベ・ヤンソンや石井桃子さんの暮らしから「ひとりで暮らすこと」を考え、美空ひばりさんと同い年になったことに感慨し、体調に不安を覚えホットヨガや健康体操教室に参加、憧れの山歩きに挑戦したり趣味の俳句を楽しみ、長く一緒に暮らした愛猫を看取り……。
歳を重ねても、無理せずに、でも興味のあることに飛び込みながら、軽やかに丁寧にひとりの日常を送る様子を綴った、くすっと笑えて清々しいエッセイ集。
(出版社HPより)
もっぱらフィクションばかりでエッセイはあまり読まないんですが、小林聡美さんの書く文章は肩の力の抜けた、それでいてお気楽なだけでないキャリアに裏打ちされた視点でのものが多く、手に取ります。
友人や知人、仕事仲間に囲まれて持ち前の明るさとユーモアを発揮しつつも、独り暮らしの寂しさや、老描との別れといったシリアスな出来事を挟み込み、メリハリがきき、記憶に残る作品になっています。
改めて小林さんの才能を感じた作品でした。