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柏井寿さん「鴨川食堂もてなし」 [本☆☆]


鴨川食堂もてなし (小学館文庫)

鴨川食堂もてなし (小学館文庫)

  • 作者: 柏井壽
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2020/06/05
  • メディア: Kindle版



シリーズ第7弾です。いい感じの人情ものになってきました。

「ビフテキ」「春巻」「チキンライス」「五目焼きそば」「ハムカツ」「ちらし寿し」の6編が収められています。

料理雑誌に掲載されている、「食捜します」の一行広告。食にまつわる心に秘めた想いを胸に、依頼人がたどり着くのは、京都にある看板のない食堂。店主の鴨川流と娘のこいしが、再現された思い出の料理で温かく迎えます。認知症の父が母と一緒に食べたというビフテキ、幼馴染みの母親が作ってくれた春巻、後悔が詰まったチキンライス、亡き夫が食べたがっていた五目焼きそば、料理人を目指す原点になったハムカツ、料理をしない父がめずらしく作ってくれたちらし寿し…。悩むことがあれば、ぜひ当店へお越しください。京都発、大人気美味しいミステリー第七弾!
(「BOOK」データベースより)

それぞれがいたって普通の食べ物ですが、その実は…とシリーズ初めのような一捻り効かせたものになっています。テーマ探しが大変でしょうが、読む側としては原点回帰しているようでうれしいです。
その土地土地にゆかりのある食べ物━それも日常的な━って旅行してもなかなかアンテナに引っかからなかったり、つい名の知れた名物を選んでしまうので食文化の多様さと思いがけない地域的な繋がりの発見が楽しいです。

その料理の奥に依頼人の人生の岐路となった出来事があり、今回はなかなか重いテーマが横たわっていました。
流によって明かされた真相や事実を受け入れた依頼人たちは新たな一歩を踏み出します。今作はどれも共感できるものばかりで、胸が熱くなったり、じんわりしたり、きゅっとなったりしました。
(「ハムカツ」で語られた”ビジネス”グルメ評論家のくだりはなかなか辛辣でした)

これまで名前だけが出てきていた料理雑誌『料理春秋』編集長の大道寺茜も登場します。けれど、鴨川流・鞠子夫妻との関係性はぼやかされたまま。
いつか明かされることもあるんでしょう。

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大倉崇裕さん「福家警部補の追及」 [本☆☆]


福家警部補の追及 福家警部補シリーズ (創元推理文庫)

福家警部補の追及 福家警部補シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/05/20
  • メディア: Kindle版



シリーズ第4弾です。今回は今まで以上の難事件です。

「未完の頂上」「幸福の代償」の中編2作が収められています。

狩秋人は未踏峰チャムガランガへの挑戦を控え、準備に余念がない。勇名を馳せた登山家の父・義之がついに制覇できなかった山である。義之は息子に夢を託して引退、この期に及んで登山隊の後援をやめると言った会社重役を殺害する(「未完の頂上」)。動物をこよなく愛する佐々千尋はペットショップの経営者。血の繋がらない弟は悪徳ブリーダーで、千尋の店が建っている敷地を売ろうとする。そもそも動物虐待の悪行に怒り心頭だった千尋は、弟を亡き者に……(「幸福の代償」)。『福家警部補の挨拶』に始まる、倒叙形式の本格ミステリ第四集。
(出版社HPより)

どちらの犯人も、夢や目標のために追い詰められてやむにやまれぬ犯行ではあるんですが、準備も計画も周到で、齟齬はあるものの決定的な手掛かりはなく、逮捕にはかなりハードルが高いように思いました。

ですので「未完の頂上」は真犯人の自供に至るプロセスで相手の弱みに付け込むという福家警部補のやり方に違和感を覚えました。

とはいえ、登山事故(「未完の頂上」)や心中事件(「幸福の代償」)に偽装された事件を全く別の捉え方をする福家警部補の着眼点は相変わらずです。
相変わらずといえば警官に見えない小柄でメガネ姿の容姿(しょっちゅう事務員に間違われるし、現場では警備の警官に追い払われる。でもって警察手帳を失くすというお決まりのパターン)と不眠不休で働く体力とのギャップには毎度ながらおかしみを覚えます。

福家警部補って何者なんでしょう。以前の作品ではサブカルに異常に詳しく、今回は登山やボルダリング、ゴルフの腕前が上級者クラスって…。
学生時代に事件に遭遇して解決するっていうスピンオフ作品を読んでみたいです。


「幸福の代償」では須藤警部が登場します。「警視庁いきもの係」シリーズですね。名前は出ませんでしたが福家警部補は薄圭子巡査とも顔見知りみたいです。こちらはコラボ作品を期待しちゃいます。

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畠中恵さん「ひとめぼれ」 [本☆☆]


ひとめぼれ (文春文庫)

ひとめぼれ (文春文庫)

  • 作者: 恵, 畠中
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/06/09
  • メディア: コミック



「まんまこと」シリーズの第6弾です。
同心見習いの吉五郎の義父・相馬小十郎が全編からんできます。強面でとっつきにくく真面目一徹ながら、なかなかに人情深く魅力的な人物のようです。

「わかれみち」「昔の約束あり」「言祝ぎ」「黒煙」「心の底」「ひとめぼれ」の6編が収められています。

札差の娘と揉めて上方へ追いやられた男。その思わぬ反撃とは(「わかれみち」)。盛り場で喧伝された約束が、同心一家に再び波紋を呼び起こす(「昔の約束あり」)。麻之助の亡き妻に似た女にもたらされた三つの縁談の相手とは(「言祝ぎ」)。火事現場で双子を救った麻之助は、新たな騒動に巻き込まれる(「黒煙」)。行方不明の男を探すため、麻之助は東海道へと旅立とうとする。そして新たな出会いが?(「心の底」)。沽券が盗まれた料理屋から、一葉が消えてしまったのは何故か(「ひとめぼれ」)。

いつの世も思い通りにならない、人の生死と色事。泣きたいときほど泣けない、「まんまこと」ワールド、慟哭の第六弾。
(出版社HPより)

1話目の「わかれみち」で大倉屋の番頭の四郎兵衛とお由有、八木清十郎とお安の2組の祝いの席が設けられ、めでたい始まりだったのですが、その後はスリリングな物語あり、やきもきする展開ありと楽しめました。

江戸時代の階級社会によるままならない恋や結婚模様が描かれます。
庶民が武家に嫁入りするには、いったん他の武家の養女になってしきたりや作法を教え込まれるなど。一方、男性の場合、生活に困窮する安くはない旗本株を買って武家になる手立てもありました。

それでも縁遠かったり、気持ちが寄り添えなかったりというのはいつの時代も同じですね。

「お気楽な」という形容詞がつく麻之助ですが、今回は大立ち回りあり、火事場で人命救助ありと素の(?)姿を見せてくれます。

「ひとめぼれ」の終幕のシーンは小十郎の一人娘・一葉があまりに残酷な現実を突きつけられ、読んでいて辛かったです。

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乾緑郎さん「機巧のイヴ 帝都浪漫篇」 [本☆☆]


機巧のイヴ 帝都浪漫篇 (新潮文庫)

機巧のイヴ 帝都浪漫篇 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/01/29
  • メディア: 文庫



「機巧のイヴ」シリーズ第3弾です。伊武の存在がどんどん薄くなっていく…。

浪漫(ロマン)とモダニズムの花咲く1918年。美しき機巧人形(オートマタ)・伊武(イヴ)は、女学校の友人・ナオミとともに訪れた猫地蔵坂ホテルで、ある男と運命の出会いを果たす。恋の始まりを予感したそのとき、幸せな日常を引き裂く大震災が襲う。時代の波に翻弄され、廻り出す運命の歯車。そして物語の舞台は、大陸の新国家・如洲(にょしゅう)へ――。心を持たない人形が問いかける、愛とは、魂とは。日本SF小説史に残る圧倒的傑作。
(出版社HPより)

前作で活躍したM・フェルや轟八十吉が伊武とともに日下國に帰国して数十年が経った世界が描かれます。
前半は大正浪漫・大正モダニズムのような世情(作中に「モボ」という言葉も出ます)の中でフェルの娘で女学生のナオミがある男と運命的な出会いをします。伊武が自転車で天府高等女学校に通うなど『はいからさんが通る』みたいです。(見たことないけど)
そして、前半の終盤に起こった出来事とともに後半の物語は一転して不穏で暴力的で狂気じみた世界へと変転します。

どうなるのか、という展開にハラハラするというよりも、広げた風呂敷をどう畳むのかという着地点が気になりページを繰りました。
その意味では終盤に繰り広げられるアクションシーンはハリウッド映画の二番煎じのようでガッカリしました。安直すぎると感じました。

パラレルワールドの日下國ですが、アナキストや首都下の憲兵隊長などモデルとなる人物の登場とともに物語のオリジナリティや、なによりスチームパンクっぽさが失われてしまったのも残念です。

ただ、唐突で美しいラストは余韻に浸るに十分でした。
続編はあるんでしょうか。

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秦建日子さん「ブルーヘブンを君に」 [本☆☆]


ブルーヘブンを君に (河出文庫)

ブルーヘブンを君に (河出文庫)

  • 作者: 建日子, 秦
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2020/05/07
  • メディア: 文庫



魅力的な素材で、全体としては面白いんですが、いろいろ細かく気になる点が残って消化不良でした。

「俺、青が好きだからさ」夏のはじまり、ハング・グライダー乗りの蒼太に出会った高校生の冬子。ある日、実家のバラ園を手伝う彼女のもとに、バイト代を貯めて買った自分だけの機体での初フライトを見にきてほしい、と招待状を手に蒼太が現れる。それから11年後、27歳の冬子はオリジナルのバラを作り始め―年月を超え、淡い想いが交錯する同名映画原作。
(「BOOK」データベースより)

冬子が高校生の前半と、それから11年後の後半に分かれます。

鷹野蒼太が「空から降ってくる」出会いは意外性に富んでいてこれぞボーイ・ミーツ・ガールなんですが、前半の終わり方の呆気なさと、その関係性が冬子に与えた影響と後半の物語にどう関わってくるのかという点がどうにもはっきりしません。

なぜなら、描写が表面的というか、冬子の心模様といったものがよくわからないためです。
冬子の中に占める蒼太の位置付けや割り合い、存在感といったものが曖昧に思えるのです。

また、伏線が張られているとはいえ、冬子が「ブルーヘブン」を手掛けようと決意するのも唐突に感じました。

終幕は冬子と鷺坂バラ園にとってはハッピーエンドなんでしょうが、冬子に想いを寄せた「彼」はどうなったのか、非常に気になりました。


地方創生ムービーというのがあるんですね。
そのノベライズかと思ったら、粗筋を見るとストーリイは本と映画で違っていました。
https://blueheaven-movie.jp/

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万城目学さん「パーマネント神喜劇」 [本☆☆]


パーマネント神喜劇(新潮文庫)

パーマネント神喜劇(新潮文庫)

  • 作者: 万城目学
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/25
  • メディア: Kindle版



創建千年の神社の縁結びの神様の独り語りという一風変わった連作短編集です。
突拍子もない万城目ワールドではありませんが、楽しくゆったりと読めます。

「はじめの一歩」「当たり屋」「トシ&シュン」「パーマネント神喜劇」の4編が収められています。

デートの途中、突然時が止まった。動かない街に現れたのは、「神」と名乗る二人の男。ペラペラまくしたてる二人に肩を叩かれ戻った世界は、あれ、何かが違う……? 万城目ワールド、ここにあり! アヤしげな「神様」に願いを託し、叶えられたり振り回されたりする人たちの、わちゃわちゃ神頼みエンターテインメント。
(出版社HPより)

ノルマに追われたり、昇進試験にハラハラしたり、お勤め百年ほどの神様を下に見たりと人間味あふれる(?)神様の軽妙なの独り語りにページが進みます。
小太りの中年男性を思わせるフォルムに対して、相方はペンネーム「ちはやふりー」という作家をめざす堅物の地銀マンのような姿をした神様で、想像しただけでギャップに笑えます。

そんな凸凹コンビが「はじめの一歩」でまっとうな縁結びをし、「当たり屋」では後任の神様が引き起こした騒動に巻き込まれ、「トシ&シュン」では他の神社のヘルプで専門外の芸能の祈願を受けます。表題作の「パーマネント神喜劇」はまさかの神様の存亡の危機に見舞われます。

神様目線の少し浮世離れした物語に、若い男女のカップルや小悪人といった人間の日常の物語が挿入されることで不思議な現実感をもって読み進められます。

それに対して最後の「パーマネント神喜劇」は千年単位で大地のひずみの調整をしているという大神が登場し、人間の日々の生活とのスケール感のギャップにくらくらしつつも最後のオチにズッコケてしまいました。

この人と神の距離感は日本らしい、というか日本人でしか描けない物語だと思います。


地震に見舞われ、崩壊した神社って阿蘇神社をモデルにしているんですかね。。。

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若竹七海さん「不穏な眠り」 [本☆☆]


不穏な眠り (文春文庫)

不穏な眠り (文春文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/12/05
  • メディア: Kindle版



葉村晶シリーズ第8弾です。40代でも地道にタフに調査し、でも年相応にガタついています。
警備業界でも伝説になったっぽいです。

「水沫隠れの日々」「新春のラビリンス」「逃げだした時刻表」「不穏な眠り」の4編が収められています。

葉村の働く書店で“鉄道ミステリフェア”の目玉として借りた弾痕のあるABC時刻表が盗難にあう。行方を追ううちに思わぬ展開に(「逃げだした時刻表」)。相続で引き継いだ家にいつのまにか居座り、死んだ女の知人を捜してほしいという依頼を受ける(「不穏な眠り」)。満身創痍のタフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。
(「BOOK」データベースより)

どの作品も葉村晶によって明らかにされる真相から悪意が露わになる結末が怖いです。特に「水沫隠れの日々」のラストは衝撃的です。物語中盤からの不穏さと緊張感の高まりの後の安穏を突き破る結末はあまりにインパクトが強すぎて続く作品に没頭できませんでした。

他の3編もタフで律儀な葉村晶の調査によってキャラのたった登場人物たちの交錯する思惑や張り巡らされた伏線が解き明かされる過程は楽しくて仕方ありません。

短編のせいか、さほど「不運度」は低いような気がします。不謹慎ですが予想された通りの不運に見舞われるというのもなんだかなーという印象がありました。フィクションだからというのはあるんですが、想定を超える不運に見舞われるのはやっぱり面白い。
そんな中で「不穏な眠り」で葉村晶が巻き込まれた災厄を「華麗に」とした表現には笑ってしましました。


<MURDER BEAR BOOKSHOP>の名刺を作る際にに杉田比呂美さんにイラストを描いてもらったというくだりには思わずニヤっとしてしまいました。
その名刺、ほしい。

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☆中山七里さん「翼がなくても」 [本☆☆]


翼がなくても (双葉文庫)

翼がなくても (双葉文庫)

  • 作者: 中山 七里
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/12/12
  • メディア: 文庫



思った以上にミステリは少なめ、それも早めに真相に見当がついてしまいます…。
主人公の市ノ瀬沙良が障害者スポーツを通して奮闘する物語として読んだほうがいいかもしれません。

「何故、選りにも選って自分が。何故、選りにも選って足を」陸上200m走でオリンピックを狙うアスリート・市ノ瀬沙良を悲劇が襲った。交通事故に巻きこまれ、左足を切断したのだ。加害者である相楽泰輔は幼馴染みであり、沙良は憎悪とやりきれなさでもがき苦しむ。ところが、泰輔は何者かに殺害され、5000万円もの保険金が支払われた。動機を持つ沙良には犯行が不可能であり、捜査にあたる警視庁の犬養刑事は頭を抱える。事件の陰には悪名高い御子柴弁護士の姿がちらつくが―。左足を奪われた女性アスリートはふたたび羽ばたけるのか!?どんでん返しの先に涙のラストが待つ切なさあふれる傑作長編ミステリー。
(「BOOK」データベースより)

片足を失った沙良がパラアスリートとしてパラリンピックを目指す章と、殺人事件の捜査に携わる犬養刑事の章が交互に描かれ、物語が進みます。

犬養隼人シリーズと御子柴礼司シリーズという中山さんの代表的な二人を登場させながらミステリ色が薄いのは残念でなりません。
泰輔に5,000万円の生命保険がかけられていて、母親でなく御子柴弁護士が管理していることが判明したという時点で事件の真相にだいたいの想像がついてしまうのが残念でした。

事故で片足を失った沙良の精神状態が丁寧に描かれていますが、やや類型的に思えました。また、後半は出来過ぎた展開だったような気がします。
それでも無謀ともいえるバイタリティで困難を切り開いていく姿勢が痛快でもありました。

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青崎有吾さん「ノッキンオン・ロックドドア」 [本☆☆]


ノッキンオン・ロックドドア (徳間文庫)

ノッキンオン・ロックドドア (徳間文庫)

  • 作者: 青崎有吾
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2019/03/08
  • メディア: 文庫



青崎有吾さんの新シリーズです。
二人で一人前の探偵という設定が目新しく、面白かったです。

「ノッキンオン・ロックドドア」「髪の短くなった死体」「ダイヤルWを廻せ!」「チープ・トリック」「いわゆる一つの雪密室」「十円玉が少なすぎる」「限りなく確実な毒殺」の7編が収められています。

密室、容疑者全員アリバイ持ち、衆人環視の毒殺など「不可能(HOW)」を推理する御殿場倒理と、理解できないダイイングメッセージ、現場に残された不自然なもの、被害者の服がないなど「不可解(WHY)」を推理する片無氷雨。相棒だけどライバル(!?)な探偵ふたりが、数々の奇妙な事件に挑む!
(「BOOK」データベースより)

不可能犯罪を得意とする御殿場と、不可解犯罪を得意とする片無、それぞれ得意分野以外はからきしという面白げなコンビが探偵事務所「ノッキンオン・ロックドドア」を構えます。
加えて女刑事の穿地警部補(駄菓子好きで毎回懐かしい駄菓子が登場します)の3人が大学時代の友人という関係性で、事件解決に挑みます。
学生時代の友人ということで、その掛け合いが軽妙で楽しいです。

不可能犯罪の切り口で推理していたのに実は不可解犯罪のそれだったなど、凝ったつくりになっています。

更には糸切美影という大学時代の友人だった謎の男が犯罪(トリック)アドバイザーのような形で彼らに絡みます。
過去になにがあったのか、いずれ明らかにされるのでしょう。

アルバイト高校生家政婦の薬師寺薬子ちゃんの存在がアクセントになっています。

続編が楽しみです。

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青崎有吾さん「図書館の殺人」 [本☆☆]


図書館の殺人 (創元推理文庫)

図書館の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 文庫



裏染天馬シリーズ第4弾です。長編で「館」シリーズでは第3弾。今回はやや冗長だったかな。

期末試験中のどこか落ち着かない、ざわついた雰囲気の風ヶ丘高校。試験勉強をしようと学校最寄りの風ヶ丘図書館に向かった袴田柚乃は、殺人事件捜査のアドバイザーとして、警察と一緒にいる裏染天馬と出会う。男子大学生が閉館後の図書館内で殺害された事件らしいけど、試験中にこんなことをしていていいの? 閉館後に、山田風太郎の『人間臨終図巻』で撲殺された被害者は、なんとなんと、二つの奇妙なダイイングメッセージを残していた……。“若き平成のエラリー・クイーン”が満を持して贈る第三長編。
“館”の舞台は図書館、そしてダイイングメッセージもの!
(出版社HPより)

夏休み明け、期末試験(前後期制なので夏休み明けに試験があるんだそうです)と並行して風ヶ丘市立図書館で起こった殺人事件を裏染天馬を解決します。

真犯人は違う意味で意外でしたが、いくつか推理に無理があるかな、という感想です。
とはいえ、天馬が小さな疑問を一つずつ潰しながら行きつ戻りつして論理を積み上げていき、真犯人に辿り着く展開はロジカルで納得いくものでした。

試験期間中のわいわいがやがや感と事件の捜査が交互に描かれ、さらに天馬の推理が一進一退してなかなか核心に到達できないのでその分だけ冗長に感じました。

まあ、このシリーズの楽しみとして天馬と袴田柚乃をはじめとした高校生たちのやりとりが面白く、なかでも1年生と2年生の合同勉強会の様子は笑いをこらえるのに必死でした。
ただ、全体として、今回はそれが少し余計に感じられました。

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